インタビュー連載 One Sky.~同じ光、風、思い。
かすみがうらマラソンには大会の成功を裏から支えるボランティアがたくさんいることを知っていますか?コース沿道の応援やエイド、障がい者ランナーの目となる伴走者、ゴール後にマッサージを施すなど、ボランティアはいつもランナーを笑顔で迎えています。本連載はインタビュー形式で、かすみがうらマラソンを支える人達の思いを探っていきます。
連載5回目は、「私設エイド」として支えるかすみがうら市在住の石川喜一さん。約30キロ地点の自宅敷地内に私設エイドを設置し、コールドスプレーでランナーをもてなしています。「田舎に来ていただけるのだから何か一つでもお手伝いしたい」と笑顔で語る石川さん。始めたきっかけ、そして15年以上も続けられる原動力とは。
私設エイド・石川喜一さん
―私設エイドを設置したきっかけは何ですか。
私は当初、30キロ地点のキロ表示ボランティアを行っていましたが、コース変更に伴い、これが無くなりました。こうした中、妻の友人が出場することになり、コールドスプレーを用意したのが始まりです。この友人が噴射する様子が後続のランナーの目に留まり、次々と立ち寄り、「あ~気持ちいい」という言葉に心を動かされました。
医学的なことは分かりませんが、ランナーが喜ぶならばと2004年ごろから始めました。
―こんなに長年、行っているとは驚きました。準備はどのように行い、コールドスプレーは何本用意しているのですか。
コールドスプレーは、75本(1本500㎖)用意しています。事前にインターネット通販で購入。当日は家族と友人あわせて6人ほどが協力して、早朝から自宅敷地内の沿道側にテーブル設置し、コールドスプレーを並べます。だいたい、12時~14時ぐらいで無くなりますね。
私設エイドを始めたころは、どのくらいのニーズがあるのか分からなかったため、36本(1本300㎖)用意しましたが、ゼッケン番号4000番台のランナーあたりから黒山の人だかりができ、わずか20分足らずで無くなってしまいました。後続のランナーからもコールドスプレーを求める声が多かったため、翌年には60本に増やしました。それでも30~40分程度で底をつき、現在は75本用意しています。
―もの凄い数ですが、費用も大変だと思います。
購入する時に1度で数万円かかるとなれば大変ですが、1日100円貯金すると思えば大丈夫です。年に1回のことなので「田舎に来ていただけるのだから何か一つでもお手伝いしたい」という思いが強いですね。コールドスプレーの他に、飴やチョコレートも置いています。水道からシャワーを出す用意もしており、気温が高いときは特に大好評で頭から水をかぶって喜んでくれます。
―こういった石川さんの思いや支えがあるからこそ、かすみがうらマラソンは全国からランナーが集まり、地元からも楽しまれる大会なのだと思います。
30キロ地点は肉体疲労を強く感じるところなので応援の言葉も工夫しています。ゼッケン番号1000番ぐらいまでのランナーには「あと12キロ頑張って」。その後のランナーには自治体名や企業名を見て「遠方からご苦労さま」と応援します。4000番台以降になると「疲れたらスプレーあるよ」「タイムや順位も大事でしょうが、周りの景色でも見ながら走ってください」と伝えています。
長年続けているといろいろなことがあります。記念撮影を求められたり、雨が降ったときはカッパを着ますが足下はずぶ濡れになったり。今でもしっかりと覚えていますが体調不良で助けを求めてきたランナーの介助をしたこともありますね。
―石川さんの温かさを感じます。やりがいや原動力は何でしょうか。
「今年もありがとう」「あ~気持ちいい」の声をうれしく思うのと同時に、何か達成感のようなものを感じます。そして来年もやろうという気持ちになります。
―今年の開催まで約1か月となりました。
今年は新型コロナウイルス感染症対策として、ランナー自らが噴射するのではなく、要望のあった部位に私たちが噴射するようにします。対策は徹底して行います。
―ランナーに向けてエールをお願いします。
こんな田舎のかすみがうらへようこそ。第一目標は30キロ突破、第二目標は田舎風景を眺めながら完走目指せ!皆さんを30キロ地点でスプレーを持ってお待ちしています。
インタビュー連載一覧
File No1.キロ表示ボランティア 石原之壽さん
File No2.応援川柳参加者・鬼丸のりぞうさん
File No3. 市民ランナー・古山明美さん
File No4.つくば国際トレーナー活動研究会